今年の今日は“立夏”だそうで。
テレビのモーニングショーでは、
何なら夏至より昼が長いですよ、紫外線対策しっかりしてねと言っている。
ぼんやりとそんなお声が聞こえて来るけど、あれれ・おかしいなぁ。
此処でテレビって、観なくはないけど日頃はモニター代わりにばっか使ってなかったっけ?
此処?此処って?と記憶というか思考があいまい。でもそんなこんな感じて考えるの、そんな声が聞こえたからで。
なんかぼんやりしてたよねと、ふんわかヌクヌクなの堪能していたら、髪へ温かな手が触れてきた。
よしよしって撫でてくれるのが気持ちいい。
ふやぁあ〜〜って蕩けそうになってたら、他の人の声も近づいて来て、
「…で、あれ?敦くん寝てるの?」
「おお。なんか昨夜よっぴきでの仕事が……ってなんで手前が知らんのだ。」
「だってぇ。有給とってたんだもの、スマホも何も着拒してたに決まってるじゃない。ねぇ芥川くんvv」
「え? いえあの、ははいっ。////////」
「そこで其奴に話を振るか、手前。」
あれぇ?太宰さんの声とか のすけちゃんの声もするよ。
なんでなんで?とどんどんと意識の輪郭がはっきりして来て、
お気に入りのソファーの上で寝転んでたってところまで思い出したところで、
「おう、おはようさん♪」
一番近くでにっこり笑ってくれるのは、大好きな姉様で。
ちょっとほど細いめにたわめられた蒼いお眸々が、やさしくって綺麗だ。
いい子いい子と撫でてくれるのが嬉しくって、ほにゃぁと笑い返しておれば、
そんな姉様の向こうから、
「おや、起きたね、お嬢さん。」
きりりとしたお声がして
別の手がワサッと髪へ埋まる。
ちょっと大きくて、でもこっちも安心できる手で、
「あ、こら手前、触んじゃねぇよ。」
「いいじゃない。敦くんの髪って手触り抜群なんだもの。」
ワササッと、撫でるというより掻き回してからサッと離れたのは
叩かれそうになったのを除けたって感じで。
でも、それでますますと目が覚めて、
うにぃと目許をこすりながら身を起こせば、
中也さんの向こうには のすけちゃんもいるのが見えた。
「起きたか人虎。」
「う〜、おはよー。」
おはようというには遅いがなと真顔で言われたけど、これが通常運転だともう慣れた。
お返事があるだけ特別扱いだとも言えて。
まだちょっと瞼が上がり切らなくてごしごし擦ってたら、
中也さんがホカホカのおしぼりを広げながら渡してくれる。
「気持ちいいですvv」
「そか、でもまだ寝ててもいいんだぜ?」
よしよしってまた撫でてくれる手が優しい。
ボクとさして変わらないくらいの背丈で体つきなのに、
とっても頼もしいお姉さんで。
今日もひょいって軽々抱え上げてくれたもん。
そうだった、昨夜、逃走犯を追っ掛ける緊急手配が入って、あっちだこっちだと駆け回ったんだった。
太宰さんは来なかったけど、その代わりというか乱歩さんへ
半グレのたまり場の資料を転送しまくってたって話だったような。
で、そんな大騒ぎの末に異能者だった容疑者を確保したら、
それを見越していたかのように中也さんが愛車で乗り付けてくれて、
ボクんこと掻っ攫ってったんだっけ。
軍警の人もいたんだけど、濃いめのお化粧とミラーになった偏光眼鏡かけてて
超ミニなスカートに編み上げブーツっていう勇ましい御々脚で、運転席から颯爽と踏み出して来て。
一見そりゃあ細い肩なのに、
胸張って背中ピンって弓なりに反らして立った姿がまた勇ましかったもんだから、
そんな挑発的なお姉さんの登場に皆して “え?”ってなってた中、
賢治ちゃんや鏡花くんがボクの手を引いて“ほらほら”って送り出してくれて。
『だって今日は……。』
『そうですよ、今日はvv』
最年少コンビが声を揃えてそう言って、
その隙にってナオミくんと与謝野先生が行った行ったって後押しして
ボクんこと そのまま中也さんへと押し付けちゃって。
「こんなお目出たい日に、正確には直前に、
つまんない騒ぎ起こしたお馬鹿が悪いのだよ。」
お休みだからと姿を見せなんだけど、
その代わりみたいにあちこちへコネと伝手を総動員して包囲網をヨコハマ中に張り巡らせて。
谷崎さん張りにその姿を消せる異能者だった容疑者をほんの2時間で追い詰めてくれた太宰さんと、
「敦くんにも見せたかったよ?
この子ったらそりゃあ張り切って、
羅生門で蜘蛛の糸みたいな捕獲技を披露してくれちゃって。」
「そ、それは…っ。///////////」
うんうん身柄確保に過ぎる力技発動させて、相手に怪我させちゃっちゃあ、
探偵社の体面に関わるかも知んないって気を遣ってくれたんだよね、偉い子だvvって
そっちでも のすけちゃんをいい子いい子って撫で始める太宰さんで。
気の早いサンドレス風の肩出しワンピに初夏向けのストールを掛けた大人コーデのお姉さまに
いいように揉みくちゃにされてる黒獣の姫御は、
そちらさんもちょっとお洒落してか、
黒っぽい花柄のワンショルダワンピにチュールのボレロを合わせていて。
これで真顔だったら鋭利な迫力もあったものが、
頬を赤くして肩を縮めていたりするものだから可愛いったらなくて。
「…目が覚めそうなら、ほら、主役なんだぞ敦。ドレスアップと行こうじゃねぇか。」
にんまり笑う中也さんの、美人なのに男前な言い様と、ほらと差し出されたエスコートの手。
まだちょっとほわんと浮いた顔のボクを、年上の3人がニコニコ笑って見守っていて、
幼い頃には縁のなかったお誕生日を祝ってくれるっていうの。
チョコで兜作ったケーキもあんぞ?
こいのぼり差したトロピカルジュースもあるのだぞ?
はいはい、私も手伝ったのだよ? ちらし寿司用に刻み海苔切ったのvv
一杯頑張ってくださったのが嬉しい、ついついにやけてしまっちゃう、
今日は小虎の誕生日なのでしたvv
〜 Fine 〜 22.05.05.
*敦くん、お誕生日おめでとうvv
女の子 Ver.でお送りいたしました。
ちょっと突貫気味ですいません。
割と一気に長いの書いたらちょっと息切れしたようで。(おいおい)
3年ぶりの規制なしなGWでしたね。
皆様楽しくお過ごしでしたか?
このまま終息に向かってほしいですね。

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